振動解析の数値計算 🆕 NEW 2026.06.03

オイラーの公式と振動現象の表現方法

今回は第二回でお話ししたオイラーの公式について解説していきます。証明そのものではなく、この式の「工学的な有用性」について解説します。

今回は第二回でお話ししたオイラーの公式について解説していきます。公式そのものは式①で表されます。

\[ e^{ix} = \cos x + i\,\sin x \qquad \cdots ① \]

振動解析のコラムとしては余談となりますが、この式に \( x=\pi \) を代入して式を変形すると式②となり、これは「世界一美しい等式」と呼ばれるものになります。

\[ e^{i\pi} + 1 = 0 \qquad \cdots ② \]

この式の証明についてはテイラー展開によるものが有名ですが、本コラムでは証明そのものではなく、この式の工学的な有用性について解説してみようと思います。

結論を先に述べると

この式の最も大きな意味は「振動現象を三角関数ではなく複素指数関数で表現できる」ことにあります。

本コラムでは「第三回:1自由度減衰系の自由振動」から複素指数関数を用いて解を表現していますが、これは三角関数での表現が非常に煩雑になるからです。

\[ m\ddot{x}(t) + c\dot{x}(t) + kx(t) = 0 \qquad \cdots ③ \]

第三回で登場したこの運動方程式を満たす解は複素指数関数に限定されると述べましたが、実際には複素数を用いず、下記の式④という実関数解も考えられます。(1自由度不減衰系の解に時間とともに減衰する \( e^{-\alpha t} \) を掛けることで解を表現しています)

\[ x(t) = e^{-\alpha t}\left( C_1 \cos\omega t + C_2 \sin\omega t \right) \qquad \cdots ④ \]

この式の1階微分、2階微分をそれぞれ求めると

\[ \dot{x}(t) = -\alpha\, e^{-\alpha t}\left( C_1 \cos\omega t + C_2 \sin\omega t \right) + e^{-\alpha t}\left( -C_1\omega \sin\omega t + C_2\omega \cos\omega t \right) \qquad \cdots ⑤ \]
\[ \dot{x}(t) = e^{-\alpha t}\left[ (-\alpha C_1 + C_2\omega)\cos\omega t + (-\alpha C_2 - C_1\omega)\sin\omega t \right] \]

\( \dot{x}(t) = e^{-\alpha t}\left( D_1 \cos\omega t + D_2 \sin\omega t \right) \) とおくと

ただし \( D_1 = -\alpha C_1 + C_2\omega \)
    \( D_2 = -\alpha C_2 - C_1\omega \)
\[ \ddot{x}(t) = -\alpha\, e^{-\alpha t}\left( D_1 \cos\omega t + D_2 \sin\omega t \right) + e^{-\alpha t}\left( -D_1\omega \sin\omega t + D_2\omega \cos\omega t \right) \qquad \cdots ⑥ \]
\[ \ddot{x}(t) = e^{-\alpha t}\left[ (D_2\omega - \alpha D_1)\cos\omega t + (-D_1\omega - \alpha D_2)\sin\omega t \right] \]

また元の運動方程式を不減衰固有各振動数 \( \omega_0 \) と減衰比 \( \zeta \) を用いて変形しておき、

\[ \ddot{x}(t) + 2\zeta\omega_0\, \dot{x}(t) + \omega_0^{2}\, x(t) = 0 \qquad \text{ただし}\; \omega_0 = \sqrt{\dfrac{k}{m}},\;\; \zeta = \dfrac{c}{2\sqrt{mk}} \]

先ほどの1階微分、2階微分を代入して、\( \cdots\cos\omega t + \cdots\sin\omega t = 0 \) の形に整理すると、この式が任意の時刻 \( t \) で成立するためには、\( \cos\omega t \) と \( \sin\omega t \) は独立な関数であるから、それぞれの係数が0である必要があり

\[ \cos\omega t \;\text{の係数}\quad D_2\omega - \alpha D_1 + 2\zeta\omega_0 D_1 + \omega_0^{2} C_1 = 0 \qquad \cdots ⑦ \]
\[ \sin\omega t \;\text{の係数}\quad -D_1\omega - \alpha D_2 + 2\zeta\omega_0 D_2 + \omega_0^{2} C_2 = 0 \qquad \cdots ⑧ \]

ここで \( D_1 = -\alpha C_1 + C_2\omega \)、\( D_2 = -\alpha C_2 - C_1\omega \) を戻して計算を行うと

\[ \text{cos側}\quad \left( \omega_0^{2} - \alpha^{2} - \omega^{2} + 2\alpha\zeta\omega_0 \right)C_1 + 2\omega\left( \zeta\omega_0 - \alpha \right)C_2 = 0 \]
\[ \text{sin側}\quad -2\omega\left( \zeta\omega_0 - \alpha \right)C_1 + \left( \omega_0^{2} - \alpha^{2} - \omega^{2} + 2\alpha\zeta\omega_0 \right)C_2 = 0 \]

解が振動を表現する、すなわち \( \omega, C_1, C_2 \neq 0,0,0 \) となる実数解が存在するためには \( C_1 \)、\( C_2 \) それぞれの係数が0である必要があるため

\[ \omega_0^{2} - \alpha^{2} - \omega^{2} + 2\alpha\zeta\omega_0 = 0 \qquad \cdots ⑨ \]
\[ 2\omega\left( \zeta\omega_0 - \alpha \right) = 0 \qquad \cdots ⑩ \]
\[ 2\omega\left( \zeta\omega_0 - \alpha \right) = 0 \;\;\rightarrow\;\; \alpha = \zeta\omega_0 \qquad \cdots ⑪ \]

式⑪を式⑨に代入すると

\[ \omega_0^{2} - \left( \zeta\omega_0 \right)^{2} - \omega^{2} + 2\zeta\omega_0 \cdot \zeta\omega_0 = 0 \qquad \cdots ⑫ \]
\[ \omega_0^{2}\left( 1 - \zeta^{2} \right) - \omega^{2} = 0 \]
\[ \omega = \pm\,\omega_0\sqrt{1 - \zeta^{2}} = \pm\,\omega_d \]

\( \omega \) は実数なので \( \zeta \leq 1 \) であり、また

\[ \cos(-\omega_d t) = \cos\omega_d t, \qquad \sin(-\omega_d t) = -\sin\omega_d t \]

となるため、\( C_2 \) の符号で吸収可能であり、\( -\omega_d \) は省略します。

以上より、三角関数を用いて解を表現すると以下のようになります。

\[ x(t) = e^{-\zeta\omega_0 t}\left( C_1 \cos\omega_d t + C_2 \sin\omega_d t \right) \]
※ \( C_1 \) と \( C_2 \) は初期条件で決定

この式に初期条件と \( \zeta \) に具体的な値を入れてグラフ化すると、第三回で表示したグラフと同じものになります。

ここまでのポイント

ここまで記述したことで既にお分かりかと思いますが、三角関数のみで表現しようとすると計算が非常に複雑になるのに対して、複素指数関数を用いると計算を圧倒的に簡略化することができます。また \( \zeta \gt 1 \) の場合(過減衰=振動しない現象)は平方根の内部が負の値となり、実関数である三角関数での表現が出来ません。そのため、実務上では「振動現象=複素指数関数」が前提となっています。

フーリエ変換とオイラーの公式

ここで動画をご覧ください。この動画はフーリエ変換とオイラーの公式を用いて、複雑な振動波形を複素指数関数で表現する流れを表したものになります。

複雑な振動波形 → 複素指数関数への変換
  1. 複雑な振動波形をフーリエ変換によって三角関数の級数に分解
  2. 一つの周波数に注目し、加法定理を用いて振幅と位相を算出
  3. らせん運動を経由して、単振動を円運動に変換
  4. 円運動を複素数平面に投影し、円運動を複素指数関数で表現

動画で示した通りですが、複雑な振動波形から複素指数関数に至るまで情報が失われておらず、可逆的な変換であることが分かると思います。すなわち振動現象の表現方法として紹介した \( a\cos\omega t + b\sin\omega t \)、\( A\cos(\omega t + \theta) \)、\( A e^{i(\omega t + \theta)} \) はいずれも等価であり、複素指数関数を用いる理由は「運動方程式の計算(微積分の処理)が容易になるから」につきます。

また式③のような2階線形常微分方程式の形で表される物理現象は物体の振動問題に限らず、

電気回路
RLC直列回路
音響
ヘルムホルツ共鳴器
制御工学
2次遅れ系

など、さまざまな分野に共通して登場し、いずれも複素指数関数によって表現されます。このようにオイラーの公式そのものは三角関数と複素指数関数をつなぐシンプルなものですが、今日の工学において、振動・波動・信号といった周期現象を扱う上で不可欠な基礎となっています。

まとめ

今回はオイラーの公式について説明しました。次回は多自由度系への拡張と振動解析について説明する予定です。

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