CAEソリューション
有限要素法の数値計算
第2回 CAEの計算の流れ
CAEとは、Computer Aided Engineeringの略で、コンピュータを使って製品の設計や評価を行うことを指します。
実際にCAEのソフトウェアを使っているが内部でどんな流れで計算が行われているかを理解している人は少ないと思います。そこで、今回はCAEの計算がどのようにして物体の挙動を予測しているかについて、基本的な流れを説明します。
CAEのソフトウェアは、様々な分野で利用されていますが、その中でも最も一般的なのが、有限要素法(FEM:Finite Element Method)を用いた構造解析です。有限要素法は、以下の流れで計算されます。
CAEのソフトウェアは、様々な分野で利用されていますが、その中でも最も一般的なのが、有限要素法(FEM:Finite Element Method)を用いた構造解析です。有限要素法は、以下の流れで計算されます。
1ステップでは、物体の挙動を支配する微分方程式(強形式:支配方程式)を直接解くのではなく、弱形式化した仮想仕事の原理式を用いて定式化を行う。ここで言う、弱形式とは、2階の微分方程式(強形式)を、1階の微分方程式に変形したもののことを言います。
そして、弱形式を解く方法として、重み付き残差法、変分法などがありますが、その中でも重み付き残差法は仮想仕事の原理に代表されるエネルギー原理が適用できない問題へも応用できることから、多くの分野で重み付き残差法が用いられています。
今回は、下図のように、微分方程式の解を求める際に、強形式の微分方程式に対して、微分方程式を直接解く代わりに、近似解を微分方程式に代入したときの誤差に重みをかけ、領域全体で積分したものを0となるように近似解を構成します。重み付き残差法(ガラーキン法)を使って弱形式に変換することで、近似に使う関数が1回微分方程式で表現でき、微分方程式の解を求める際の計算量を大幅に削減することが可能となります。
以下は、1次元問題の場合の強形式を弱形式に変換する流れになります。
上記の内容を有限要素法の2次元弾性問題として考えた場合のCAE内部での計算の流れを紹介します。
2次元弾性問題の場合、1ステップでは、弱形式を以下のような変位と外力の関係を用いた式①で表します。
式①は左辺がひずみエネルギーで右辺が外力の和になっていますので、この式は、仮想仕事の原理になります。
この弱形式の方程式を導出し、2ステップでは連続的な関数で表現された微分方程式を、離散化する必要があります。離散化とは、解析する対象形状を無数の小さな要素に分割し、以下の様にそれぞれの要素に分割することです。そして、分割された要素毎に方程式を立てます。
次に3ステップの作業として、形状関数などを使い、離散化された要素毎に積分計算を行います。
ひずみと応力の関係σ=εEは、2次元の平面応力場では、以下で表現されます。
これをマトリックス表記にすると、以下のマトリックスで表現できます。
有限要素法では先にひずみが計算されてひずみから応力を計算するので、逆関数の公式
を用いて以下の式を作ります。
この赤枠をDマトリックスとすると、式③の右辺の積分の項は以下の式⑥になります。
離散化した各要素に変位関数を構築するために形状関数を使い、計算するとひずみと変位のカップリングマトリックスBを以下で表現できます。
これらの式⑤のDや式⑦のBのマトリックスなどを最初の弱形式①に当てはめると、最終的には以下の式⑧となります。
上記の様に離散化された各要素で方程式を構成し、4ステップで各要素の方程式から全体方程式を組み立てます。最後に、5ステップで全組み立てられた全体方程式を計算します。
以上が、基本的なCAEの内部での計算になります。
次回はステップ3で出てきた「形状関数」について、詳しく説明してみようと思います。
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