CAEソリューション

有限要素法の数値計算

第1回 有限要素法の歴史

■有限要素法とは

  有限要素法(FEM:Finite Element Method)は、解析的に解くことが困難な微分方程式の近似解を数値的に得る方法の一つです。
この方法では、解析対象の領域を小領域(要素)に分割し、各小領域における方程式を比較的簡単な形で表現します。

3有限要素法とは

この手法は、現在では、構造物や材料の力学的な特性を評価するために幅広く使用されています。さらに、流体力学、熱伝導、電磁気学などの多くの工学問題でも使用されています。有限要素法は、複雑な形状や境界条件を持つ問題を扱うことが可能であり、そのため実際の工学設計や科学研究において非常に有用です。

今回は、そんな有限要素法の歴史について紹介して行きます

■有限要素法の歴史

●1943年
  Courantにより、数学分野での有限要素法の考え方の基礎となる3節点三角形要素によるねじり問題が提唱されました。これが数学分野において、最初の有限要素法の論文とされています。ここで発表された論文では、構造物の力学的な挙動を解析するために使用される手法として変位法が紹介されています。

3節点三角形要素によるねじり問題

●1956年
  Courant から変分法を学んだPragerの講義を受けたTurner,Clough,Martin,Topが数学分野の変分法を工学問題として応用し、その後、4人が飛行機の翼の剛性を計算する新しい解析法についての論文を発表しました。これが工学分野における有限要素法の始まりとなります。この論文は簡単なトラスの例題を使って有限要素法(変位法)について説明しています。
そして、1960年に有限要素法と命名されました。

トラスの例題を使って有限要素法(変位法)について説明の図

●1965年
  Cloughによって応力仮定法が提案され、これが現在のNastranのベースになります。これまでの要素と違い、応力仮定法の要素はアイソパラメトリック要素よりもロバスト性があり、Nastranの要素は、このアイデアを採用しています。

●1969年
  Galerkinによって発表された有限要素法の一種である、Galerkin法(重み付き残差法)は有限要素法の一種であり、メッシュを用いて空間的に離散化された場から弱形式化された偏微分方程式により、解を見つける方法です。

■Nastranの歴史

  1968年にMSCソフトウェアがNASA(米国航空宇宙局)のために有限要素法を用いた構造解析用のソルバNastranを開発しました。これが世界初商業用の構造解析ソフトウェアMSC Nastranになります。ちなみにNastranのネーミングは、NASA Structural Analysisの単語の2文字を繋げたものになります。
このNASTRANはMSC社など数社が販売権を取得し、世界中で販売されてきたが、その中でもMSC社が販売権を持つ他社を全て買収したことから、最終的に米国連邦取引委員会より、独占禁止法違反として告訴されました。和解条件としてMSC社が「MSC NASTRAN 2001のソースコードを1社以上に無償提供する 」ことが決定し、当時UGS社(今のSiemens社)がそのソースコードを取得し、独自のノウハウを組み込んだ現在のNX Nastranが誕生しました。
現在は、Nastranベース以外のソルバも含め、多くのCAEソルバと関連したプリ/ポストのツールが販売されています。

次回以降は、CAEの中身について説明していく予定です。

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