CAEソリューション
作ってみた ~形状最適化トータルサポートの実例~
第2回:3Dソリューション活用事例の計画
コラム2回目となる今回からは、実際に3Dソリューションを活用したモノづくりをしていきます。
今回は実施するモノづくりの計画と概要についてお話しします。
対象は下図のスケートボード、トラック構造のハンガー及びベースプレートです。
スケートボードは全体質量の低減により、より高いオーリー(ジャンプ)など競技パフォーマンスの向上が期待できます。このため、スケートボード全体の中でも大きな質量を占めるハンガーとベースプレートについて、形状最適化シミュレーションと繊維強化樹脂を利用した3Dプリンティングにより、強度と静剛性を維持したまま軽量化することを目指します。
計画しているプロセスは下図の通りとなります。
各プロセスで想定している作業や使用するツール、懸念点事項は次の通りです。
・現状形状の把握:
現状形状の把握プロセスではSCANTECH社のSIMSCANを利用して3Dスキャンすることを想定しています。
このハンディタイプのスキャナーは部品を高速に形状スキャンすることに優れております。
ただし、3Dスキャナーの特性として下図の穴部はスキャンしきれない可能性があります。
3Dスキャンの結果はSTLの形式で出力することができます。この得られたSTLデータをリバースエンジニアリング専用ソフトのQUICKSURFACEなどを使用してCADジオメトリのデータに修正、変換します。
●最適形状の探索:
最適形状の探索プロセスでは、最初に3Dスキャンによって得られたハンガー/ベースプレートの現形状での強度・静剛性に関する素性をCAEの活用によって把握します。使用するCAEツールはAutoDesk社のFusion 360を想定しています。
このCAEツールはCADジオメトリをベースに境界条件を設定するだけで簡単にCAEを行うことができます。また、トポロジー最適化機能も備えており、今回のような―リバースエンジニアリングからトポロジー最適化を行う際に適したツールです。
現形状の素性がわかれば、それと同じ強度と整合性を持ち、かつ軽量なハンガー/ベースプレートの最適形状を算出します。この際計算上の材料も鋳鉄から3Dプリントに使用する繊維強化樹脂に変更します。最適化形状を求める手法はトポロジー最適化を利用し、トポロジー最適化を実施するツールもFusion 360を利用します。
繊維強化樹脂を使用するとしても、鋳鉄で作られたものに匹敵する強度と静剛性を持つ形状が算出できるか、というところが最大の懸念事項です。
●最適形状の作製:
最適形状の作製プロセスではハンガー/ベースプレートのサイズを考慮してMarkforged社のFX20を利用して3Dプリントすることを想定しています。
このプリンターは長繊維カーボンと繊維強化樹脂を組み合わせたプリントが可能で、大型で強度の要るパーツのプリントに適しています。
以上、今回は今後実際に行う3Dソリューションを活用した最適なハンガー/ベースプレートの作製について、その計画と各プロセスでの想定している作業、使用ツール、懸念事項などをお話ししました。次回は最初のプロセス「現状のハンガー/ベースプレート形状の把握」を行います。
疑問やお困りごとがございましたら、以下お問い合わせより、ご相談ください。