CAEソリューション
作ってみた ~形状最適化トータルサポートの実例~
3Dソリューションの概要
現在の工業製品は、より高品質、より高効率、より高精度、より静粛・・・と求められる性能が高まっています。自動車の例では、燃費に直結する重量は継続的に低減を求められる一方で安全性と信頼性向上のためにより一層の強度と剛性が求められます。また、電動化に伴いこれまで問題とされていなかった高周波の騒音まで低減を求められます。このように複雑で難易度の高い要求を従来の形状検討手法と製造方法だけで満足することは難しく、形状最適化や3Dプリントの技術を活用した製品開発が行われています。このコラムでは3Dスキャン、形状最適化、3Dプリントの3つの3Dソリューションを活用した設計実例を連載します。第1回目はこれらの3Dソリューションについて概要をお話しします。
●3Dスキャン:
3Dスキャンは物の形状を正確に把握する技術です。この技術は製造現場での現物形状計測だけでなく生物や工芸品など設計図のないものの形状把握に利用されます。3Dスキャンの歴史は古く、1960年代ごろに自動車の製造工程で使われるようになりました。3Dスキャン活用の様子を動画で紹介します。
3Dスキャン例
●形状最適化:
形状最適化は構造解析モデルを用いて設計可能な空間内で構造物に求められる目標性能を最大限達成するための「構造物のあるべき姿」を探索することです。その手法に「トポロジー最適化」や「Generative Design」と呼ばれるものがあります。
トポロジー最適化とGenerative Design
トポロジー最適化は1989年にその商用ツールが日本のメーカーから世界で初めてリリースされました。以来、その数学的手法の発展とコンピューター性能の向上により、その技術は目覚ましく発展を遂げました。Generative Designは多くの場合AIを活用して仕様を満足する形状案を複数生成する最適形状設計手法で、設計開発においてその需要が高まりつつあります。トポロジー最適化とGenerative Designについての詳細はこちらをご参照ください。
形状最適化について
●3Dプリント:
トポロジー最適化やGenerative Designによって得られた最適形状はその複雑性により、鋳造や切削といった従来の製造手法では製造が困難という問題もありました。それを解決する手法が3Dプリントです。
3Dプリンターによる造形物(画像はAPPLE TREE社提供)
3Dプリンターの歴史も1980年代後半にさかのぼります。トポロジー最適化ツールが世にリリースされる前年の1988年にアメリカの企業が世界初の3Dプリンターを完成させ、リリースしました。以来造形技術の進化や低価格化により世に広く浸透していきました。
今回は3Dソリューションの概要をお話ししました。次回以降これらのソリューションを活用した設計事例をお話ししていきます。次回は実際に設計する対象と設計のプロセス、各プロセスで活用するツールについてお話します。
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