CAEソリューション

形状最適化について

軽量/小型化・高性能化・消音化・高エネルギー効率化・・・など製品に要求される性能は年々厳しくなっています。従来のCAE手法だけではこれらの要求を満足することは難しく、新たな設計アイデア創出の手段が必要です。形状最適化はそれを実現する一つの手法となります。
形状最適化では形状最適化ツールを活用し、設計可能な領域内で強度や質量など着目している製品性能が最大となる形状を探索します。
形状最適化は製品性能の向上だけでなく、コスト削減や技術力の向上をもたらします。一般に形状最適化で最大40%の質量低減を狙えると言われています。これは40%の材料費を低減できる可能性があることを意味します。また、形状最適化で得られた形状はエンジニアに新たなイノベーションをもたらすとともに、その形状を深く考察することで目標性能と形状に関する新たな知見が得られます。
電通総研セキュアソリューションではトポロジー最適化とGenerative Designの2つのアプローチを活用して形状最適化を行います。

トポロジー最適化とは

例えば、H形鋼の曲げ剛性は断面形状によって決定される断面2次モーメントと相関があります。スプリングのバネレートは材料の他巻き数や線径、中心径によって定まります。このように構造物の性能は形状や形態(穿孔の有り無しなど)と相関があります。これは構造物の目標性能を満足する最適な形状が存在することを意味します。数学的な根拠に基づき構造物の最適な形状/形態を算出する方法論の一つがトポロジー最適化です。外形寸法のみを対象とする寸法最適化や形態の変化が許容できない(例えば穿孔は消滅しない)形状最適化とは異なり、トポロジー最適化は形状/形態の両方を考慮可能な自由度の高い最適化手法です。
トポロジー最適化の基本的な考え方は構造問題(強度/剛性問題)を設計可能空間内での材料分布問題に置き換えることです。すなわち設計可能空間内における最適な材料分布を検討することです。領域内での材料分布問題とすることで形状/形態の変化を許容した最適化を行うことが可能となります。この材料分布は主に以下の3つの方法によって表現されます。

トポロジー最適化とは

●均質化法

設計領域を有限要素分割し、その各要素についてONまたはOFFすることによってトポロジー最適化を試みると、ONまたはOFFにする変数(すなわち要素数)が有限かつ整数に制限される(整数計画問題)ことにより解くべき方程式の不連続性(微分不可能問題)が発生するため解を得られなくなります。そこで均質化法では材料分布をマイクロストラクチャの充填により表現します。具体的には、有限要素分割された各要素は一つのマイクロストラクチャとして表現され、そのマイクロストラクチャは周期的に分布される矩形穿孔とストラクチャの主軸方向で表現されます。各要素における材料特性は矩形穿孔の寸法a,bおよび主軸方向θの3変数で表されることとなります。ここでθはその要素の主応力方向です。これは矩形の大きさが0であればその要素は完全に材料で埋まっている、あるいは矩形の大きさが要素のサイズであればその要素は完全な空洞であることを意味します。各要素の材料特性はマイクロストラクチャの3変数と関連付けられ、設計空間全体の要素についてマイクロストラクチャを検討することで最適な材料分布を求めます。

トポロジー最適化:均質化法

●密度法

均質化法による材料分布は計算上実際に要素ごとの矩形穿孔と材料異方性を考慮しているため、その物理的意味が明確である一方計算アルゴリズムが複雑になります。そこで材料分布をより簡潔に表現し計算負荷を低減させるために各要素における材料分布を0~1の値を取る変数で表現することを考えます。密度法では材料密度の値(元の材料密度との比率)をこの変数とする仮想的な材料を導入します。すなわち、その要素における材料密度が1であればその要素は完全に材料で埋まっている、0であれば完全な空洞であり、その中間であれば材料埋まっているとも空洞ともつかない中間的な(スポンジのような)状態となる、とします。このような仮想的な材料を用いると各要素における材料密度と要素剛性は例えば下記式で関連付けられます。
     𝐾=𝐾_0 𝜌^𝑃  (SIMP法)
ここでKはその要素の剛性、K0は要素が完全に材料で埋まっている場合の剛性、Pはペナルティ係数です。中間的な密度を持つあいまいな要素が設計空間の大部分を占めるような解が得られてしまうと、その解にトポロジー最適化としての意味を持たなくなりますので、中間的な密度に上式Pで表されるペナルティを科し各要素の密度がなるべく0または1で表されるようにします。ペナルティ技法の一例が上式SIMP法です。密度法では均質化法に比べて計算負荷が低減できるメリットがある一方、物理的意味の解釈が困難な中間的な密度を持つ要素が残ってしまう可能性があることがデメリットです。

トポロジー最適化:密度法

●レベルセット法

均質化法でも密度法でも望ましくない中間的な特徴を持つ要素が領域に広く残ってしまう可能性があります。レベルセット法はこの問題を解決する手法になります。レベルセット法ではレベルセット関数と呼ばれる-1~1の値を取る関数によって材料分布を表現します。レベルセット関数φが-1<φ<0であれば物体領域、0<φ<1であれば空洞領域、φ=0の等値面はそれらの境界となります。設計領域を有限要素分割したそれぞれの節点にレベルセット関数の値が与えられ、値が0となる境界に基づいて材料分布が表現されます。境界付近の要素は密度法同様に材料特性が定義され、中間的な特性を持つ要素が発生しますが、このような要素の発生が境界付近に限られることがレベルセット法の特長です。一方、境界の進展を計算する計算過程となるため、新たな穴を作成するなどの形態変化には制限があることが短所です。

トポロジー最適化:レベルセット法

電通総研セキュアソリューションではAltair社のInspireを利用したトポロジー最適化を行っています。

Generative Designとは

従来の最適化手法は設計者が作成した初期形状に対し様々な条件を与えることで不要な部分を削除することで最適な形状を目指しますが、Generative Designでは入力荷重・拘束・不可侵領域等の条件を満たす形状を新たに”創造”することが出来ます。創造される形状は人間による発想を遥かに超え、新たな示唆に富んでいます。この創造のイメージの1例として、極めて長い期間をかけて成し遂げているものが生物です。例えばヒトの骨格は、現人類の骨格は直立2足歩行をするのに最も適した構造です。負荷がかかる部分の骨は、負荷を分散する形状になっています。また、骨の強度と軽さを両立するために負荷がかかる表面は緻密に、内側はスポンジ状になっています。負荷の分散はトポロジー最適化、骨の密度はラティス構造最適化、長い時間をかけての進化はフィードバックや遺伝的アルゴリズム・・・の様にGenerative Designはこれらの手法を幅広く包含し形状を創造します。Generative Designの解析により出力される形状は1種類ではなく、材料や製造方法・コストに応じた形状案を数多く創造することが出来ます。解析者は複数の形状案から最適な形状を選択することが出来、形状検討の質を大幅に高めることが可能です。Generative Designは以下の製造業界で広く活用されています。
 ・コンシューマー向け製品製造
 ・自動車
 ・航空宇宙
 ・重工業

電通総研セキュアソリューションではAutoDesk社のFusion360を利用したGenerative Designを行っています。

Generative Design

トポロジー最適化とGenerative Designの使い分け

運用シーン 恋慮する入力条件 得られるデザイン 考慮する製造制約
トポロジー最適化
トポロジー最適化により算出されたサイクリング用ヘルメット
既存デザインの改良 1条件 1デザイン 切削や鋳造を含む広い制約
Generative Design
Generative Designから生成された自転車サドル
新規開発 複数条件 複数デザイン 基本的に3Dプリンタ*1

*1:1mを超える造形が可能な3D-Printerもありますが、 GenerativeDesignの対象は40cm四方まで程度を想定しています。